■写真展概要
名称 : KOBE 819 GALLERY企画 ヒガシジユウイチロウ写真展 『 A=A A≠A(building) 』
会期 : 2019年11月9日(土)〜11月17日(日)
A=A A≠A(building)
1枚の写真プリントAを2000回繰り返しコピーしたもの。A=Aが期待される複製行為を極限まで繰り返して差異を増大させることで、偽物A’がコピーの概念を超えたあたらしい価値Bを作り出す。一般に、1枚の写真AをコピーしたAʼは、Aと等価値として扱うが、統計学的にコピーしたことが確定する2000回の作業を通すことで、詳細に観察しないと確認できなかったAとAʼの差異が増大し、等価でなくなる。ゆえに、複製機器として一般的に使用するコピー機で複製しても等価として扱えないほどの大きなズレを抽出することが明らかとなった。一般的な価値観では、コピー元である写真Aが本物という価値があり、コピーされたものA’は偽物で(本物に対して)価値がないとされるが、コピー元との差異が小さく同じ姿か類似することが前提にある。2000回のコピーで差異が差異でなくなる場合、コピー元Aに対する価値が判定できなくなるため、偽物A’はコピーの概念から解放され、あたらしい価値Bに生まれ変わることができる。この作品は、量子力学のワグナーの友人というパラドックスと同じ論理構造であり、この写真AとコピーしたA’は、観察者の観点とその基準(期待値)を設定しないと比較することができない。観点をきめている観察者とその期待値に支配されている。物理学者のユージン・ワーグナーによると、もし、誰かが自分をみることで自分が生きていることが確定するならば、自分はその誰かによって存在する。その誰かは、別のだれかがみることができれば、その誰かは別の誰かによって存在すると。ワグナーの友人という思考パラドックスである。
Building
私はある1枚のハガキに着目した。人類が世界ではじめて核を使用したこの日、廣島がヒロシマに、広島県物産陳列館が原爆ドームに変わった。人々にとって、ヒロシマが廣島であったことを忘れても、放射能は半減を繰り返すだけで消滅することはほとんどない。50年以上経って、その痕跡は放射能ともに世界遺産として登録され、平和の象徴となった。